2012年2月25日土曜日

紙ベースお薬手帳普及策の愚

来年度の調剤報酬改定、そろそろ出揃いましたね。
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会 (第221回) 議事次第
別紙1-3(調剤報酬点数表)(PDF:120KB)


ポイントは3つ。
・後発品調剤率の%目標がより厳しくなるものの、現状余裕でクリアしている薬局にはプラス改定。
・薬剤服用歴管理指導料30点と薬剤情報提供料15点の統合→41点。
・在宅患者の距離設定。

2番目について軽く書きます。


お薬手帳ってご存知ですか?「どこの病院で」「いつ」「何の薬を」「どれだけ」「どの薬局で」もらったかが記録されている手帳です。
最初は白紙の小さいノートなんですが、薬局が発行するシールを順番に貼っていくことで記録となります。小児や高齢者で特に有用。

お薬手帳を渡して併用薬を管理することで、薬局は15点を算定できます。熱心にお薬手帳を薦める薬局もあれば、必要そうな患者さんのみに渡す薬局もあり、薬剤情報提供料15点の算定率は薬局によってまちまち。ある意味薬局の自主性と患者さんの特性で、算定率はあるべきところに落ち着いています。

しかし今回の調剤報酬改定で事情はガラリと変わります。薬剤服用歴管理指導料30点と薬剤情報提供料15点を統合する、つまり両方算定できるか、さもなくばゼロかです。

薬剤情報提供料15点の算定率10%の薬局が何も手を打たない場合
処方箋が1000枚/月とすると30点×1000×90%=270,000円の減収減益要因となります。
正社員の月給約1人分ですね、きつい。

これが嫌ならやるしかありません。
ほぼ全員に、強制的にお薬手帳を配布するのです。
「お薬手帳持ってない?じゃあ入れておきますね」
「お薬手帳忘れてきた?じゃあ新しく作っておきますね」
「お薬手帳要らない?そんなこと言わずに^^;」
なんだこれ。
薬局は4月からお薬手帳配布機関になるかもしれません。
実質的にお薬手帳の義務化です。

もっとも、後期高齢者のときのようにシールを渡せば算定可とかに緩和してお茶を濁す可能性があります。現実的にはこっちになりそうだけど全く意味不明ですねこれは。まさに誰得。医療費の無駄遣い。



しかし、なぜ今回こんなにお薬手帳を神格化してるんでしょ?
なんでも、震災やら津波やらで飲んでる薬がわからなくなった人でも、お薬手帳を肌身離さず持っていたおかげで~とか、そんな美談を聞きます。それって被災者の何%でしょう?99.9%以上の人は間違いなくお薬手帳も津波で流されてるよ。ごくごく一部の美談を一般論化するのは無茶にも程がある。

”お薬手帳”的なものを普及させたい、という方向性は正しいと思います。ただ、やるならちゃんとやってほしい。
すなわち、お薬手帳のクラウド化です。

患者さんに管理させると、言っては悪いが持って来るのを忘れる。シールを渡しても貼るのを忘れる。病院ごとにお薬手帳を分けちゃう。それをまとめようとすると怒る。そもそもお薬手帳の意味がわかっていない。

ゆえに専門家が管理すべきです。それも、維持可能で、ユビキタス(死語?)で、低コストな方法で。
すなわち、お薬手帳のクラウド化です。

共通番号制と紐付けて、国民IDひとつでどの医療機関からでも過去の処方歴がすべて参照できるようにする。将来的には医療DBを見据えて計画すればいいんじゃないかな。

そして薬局薬剤師の仕事はなくなる、と^^;


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