2014年8月18日月曜日

「全国どこの処方せんでも受け付けれます」は語弊があるよね

GNB137 処方せん(赤)のぼり
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薬局の店先によく書いてある、「全国どこの処方せんでも受け付けれます」の文句。意外と知られていなくて門前薬局にしか行かない人もいる反面、これを真に受けて遠くの薬局に行って困った事態に陥っている人もいます。

厚生労働省の旗振りのもと面分業が推進され、そのキャッチコピー(?)なんでしょうが、これにはやや語弊がありますよね。

「どこの薬局でもいいんだ」とばかりに門前薬局以外の薬局に処方せんを持ち込むことによるデメリットは以下のふたつ。


1.在庫


「受け付けれます」とは書いていますが、「すぐにご用意できます」とは書いていないのがポイント。世に存在する医薬品の数は1万をゆうに超えるので、ふらっと入った薬局ですべて揃うなんてことはまずあり得ません。

なぜなら、厚生労働省が定める施設基準である基準調剤加算1を算定するのに必要な品目数が700品目。基準調剤加算2でも1000品目です。


眼科の処方せんなら眼科が近くにある薬局に持ち込むとか、近隣の病院の診療科を参考にすることである程度ヒット率を上げることはできますが、取り寄せになると思っておいた方が無難です。

早ければ次の日には受け取れますが、モノによっては1〜2週間かかることもあるので、すぐに欲しければ門前薬局でもらうのが無難です。



2.待ち時間


門前薬局はメイン処方元からくる処方せんを毎日見ているので慣れていますが、門前以外の薬局だと初見ですし、いろいろ勝手がわかりません。

処方せん入力は病院登録から始めますし、馴染みのない診療科の馴染みのない薬。必然的に待ち時間は長くなりがちです。疑義照会(病院への問い合わせ)が必要であればなおさら。

ただ、大病院の門前薬局だとそれ以上に待たされることも多々あるので一概には言えません。



結論として、風邪などの急性疾患で「そのときだけ」の処方せんであれば門前薬局で薬をもらうのが無難です。

高血圧などの慢性疾患で「ほとんどいつも同じ薬」であれば門前以外の薬局、特に自宅近くの薬局に持ち込んで取り寄せを依頼し、以降かかりつけ薬局として利用する、というスタイルもアリかと思います。




余談ですが、面分業で製薬会社も得をします。処方せんが門前薬局に集中するのと、門前以外のあちこちの薬局に散らばるのと、比較すると後者の方が売上は増えます。配送コストは卸負担ですし。


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個人的には面分業なんてしなくていいと思っています。社会全体で膨大な無駄が発生していますし、面分業というかかかりつけ薬局のメリットたる患者情報の集中化はクラウドなり国民総背番号制なりを使って情報の共有さえできれば事足りますから。


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