2015年3月4日水曜日

審査機関、及びレセプト請求のあるべき姿


一年半ほど前に書いて下書きのまま眠ってたので追記修正して公開(^^;

以前書いた、病院に届く突合再審査結果連絡書(兼処方せん内容不一致連絡書)に処方した覚えのない薬が記載されていたらの続き。審査機関、及びレセプト請求のあるべき姿について、思うところを書きます。

方向性としては明確な基準設定と徹底した自動化ですが、今やっていることを単に機械にやらせるだけでは芸がない。それでも生産性は多少上がるでしょうが、”請求”や”審査”そのものをなくしてしまえばもっと効率化できますよ、という話。

以下、2年以上前の記事ですが関連しているので是非どうぞ。

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1.審査基準を設定


まずはコレなくば始まりません。

例えばある抗菌薬は何日までの投与が適切か、あるビタミンの投与はどこまでが適切か、この病名に対してこの処方内容は適切か、などなど。これらすべてにエビデンスに基いた明確な基準を作成します。

あくまで「保険適用が否認されるのであって、医師の処方権を侵害しているわけではない」ところに注意。基準外で治療を行いたければ患者同意の元、自費で行うことは自由です。このあたり、しっかりと医師会を通して医師に納得させる必要がありますね。

関連記事:保険適用と保険適応、どっちが正しい?


2.処方入力時点で1の基準をクリアさせる


的外れな残薬確認の意義と、真の解決策でも書きましたが、ある問題を解決するには上流に近いところほど解決が容易です。ゴミ問題を解決するにはゴミ業者が孤軍奮闘するよりも、家庭での分別を頑張ってもらう方がいいですし、メーカーが分別しやすい製品を作るのが一番いい。

医療費の審査も同じ。請求してみたけどダメだった〜ではなく、そもそも処方入力の時点で○か×か出れば無駄な請求をせずともよいわけで、お互いにラク。(少なくとも投与日数制限がある薬(新薬や向精神薬)くらいは現状でも入力時点で弾けると思うのですが…。)

そのためには上記基準を漏らさずシステムに組み込み、基準から外れた場合ちゃんとエラーを出すレセコンが必要ですが…レセコンはもっとエラーを出そうよで書いたような現状を鑑みると、彼らには無理な芸当かもしれませんね。特に病院のレセコンは酷い…めまいがします。

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3.医療機関で使用するシステムの共通化ないし共有化


そして全医療機関が同じシステムを使うこと。あるいは、同じシステムにアクセスして情報を共有することが必要です。もちろんクラウドがいいでしょう。

今の処方せんの流れは伝言ゲームと間違い探しなんです。薬局で紙の処方せんを見ながらレセコンに入力したら不一致がないか薬剤師が入力監査をするし、審査機関は突合検査で似たようなことをします。何やってんだろね?

全医療機関で共通のシステムにアクセスすれば不一致は発生しないし、二度手間にもならないし、Google Driveを利用したクラウドシフト管理術で書いたような「バージョン違い」も発生しません。

つまり、「疑義照会で薬Aから薬Bに変更になったのに病院側がデータを修正していなかったせいで突合検査で引っかかる」なんて事態は起こり得ません。

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4.請求・審査の自動化


かくして、「請求業務」および「審査業務」は不要になります。

上記システムが回り始めれば、そもそもレセプトファイルをパッケージして送信ボタンを押す必要などありません。ある患者のある処方をどの薬局でいつ受け取ったかが容易にわかるので、請求せずとも調剤報酬が当該薬局に自動で支払われますし、入力時点で審査済みなので事後審査も不要。

「審査しないと野放図な請求が増える」と言う人がいそうですが、そのための基準です。もし、基準の範囲内において不正請求する余地があるのであれば、基準を変更すればよいのです。

逆に「人間が審査したら不正請求を見抜けるの?」と聞きたい。そして「その費用対効果はプラスなの?」とも。つまり、発見できる不正請求の金額は、審査員の人件費より多いのか?という話。


5.自己負担の徴収をクレジットカードで


これはできればですが。

GIZMODO ナイジェリアの新しい国民IDカードはMasterCardがついている

間もなく始まるマイナンバーで、日本もこういうのやってくれないかな?医療機関での支払いは強制的にクレジットカードを使うようにすれば便利。

例えば、患者帰宅後に病院が処方忘れに気付いたケース。薬局に頼めば薬は郵送できますが、さて会計は…?クレジットカード決済なら後から変更が可能。

あと、「主保険のみだと思ってたら公費もってたー!」なケースや、「54公費は2割負担なのに間違って1割負担でもらってしまったー!」なケースでも使えるかも…と思いましたが、そもそもマイナンバーで保険証はワンカード化されていますし、負担割合の計算も自動なので、そんな事態は起こり得ませんね。

一番いいのは「今手持ちがない」とか「年金が入るまで」とか言って支払いを踏み倒そうとする人からも、ちゃんと徴収できることですね。是非(^人^)


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