2013年2月22日金曜日

棚卸前に在庫を減らす必要はありません

そろそろ棚卸が近い薬局も多いのではないでしょうか?今年は薬価改定がないので平和な年度末のはずですが、「棚卸前だから在庫を絞れ」という話をちらほら聞きます。

ちょうど1年前に「棚卸前だから在庫を絞れ」は大ウソでも書きましたが、未だにこの誤った認識をお持ちの方がいるようです。

はっきり言います

棚卸前だからと在庫を過度に減らす必要はまったくありません


”棚卸”を”決算”に置き換えても同じことです。

棚卸前に在庫を減らす派の言い分から始め、続いて在庫を減らすと会計的にどうなるかを(簡単に)解説します。


【在庫を減らす派の言い分】


「なぜ?」と聞くと、たいてい明確な回答が得られませんが「在庫が少ないほど支払う税金が少なくて済む」というイメージがあるようです。この”税金”をある人は「固定資産税だ」と言い、ある人は「法人税だ」と言う。もちろん両方間違いです。

まず固定資産税。

Wikipedia 固定資産
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BA%E5%AE%9A%E8%B3%87%E7%94%A3

販売目的でなく継続的に会社で使用することを目的とする財産のことを指す(上記より抜粋)

表に記載されているように、土地や建物、工場の設備などです。販売目的の医薬品は固定資産ではなく流動資産に分類されます。もちろん固定資産税の対象外です。


次に法人税。

会計に詳しくない人でも、利益が多いほど税金をたくさん取られるというのは知っているかと思います。売上から仕入にかかった金額(売上原価)を差し引き、売上総利益(いわゆる粗利益)を算出します。

売上原価=期首在庫+当期仕入ー期末在庫

売上総利益=売上ー売上原価

薬局では通常、期末在庫を減らすためには仕入を減らすので、相殺されて売上原価には影響しません。

あるいは一般小売業で、仕入値で叩き売って期末在庫をゼロにしたとしても、売上原価の増加分と同じ額だけ売上も増加するので、当然ながら売上総利益は変わらず。


日本調剤の損益計算書の一部です。数字で確認してみてください。

ゆえに在庫を減らしても減らさなくても、それによって法人税が増減したりはしません。


【在庫を減らすとどうなるのか】



同じく日本調剤の貸借対照表の一部です。流動資産の項目に”現金及び預金”と”商品及び製品”がありますよね。在庫を絞ると前者が増えて後者が減り、在庫を増やすと前者が減って後者が増える。ただそれだけのことで、過度に在庫を増やさない限り会社に実害はありません。

(正確にはほとんどの薬局は現金払いではないので、増減するのは”現金及び預金”ではなく”買掛金”ですが、話を簡単にしました。)


なぜこのような誤った認識が業界の一部(?)に広まっているのか不思議でなりません。以前も書きましたが、3月決算会社の社員の勘違いが原因としか思えません。在庫を絞る理由は薬価改定なのに、決算or棚卸がその理由だ、みたいな。

もしそんな勘違いをしていて、3月ではない棚卸月or薬価改定がない年の3月にも過度に在庫を絞っている管理薬剤師がいたら教えてあげてください。



数字に強いといろいろ便利です。薬剤師は医療従事者といえど、社会人である以上ある程度知っておいて損はないかと思います。私が今まで読んだ中では以下の書籍がシンプルで読みやすく、最もオススメです。


決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44)
國貞 克則
朝日新聞出版
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