2013年8月26日月曜日

不良在庫が発生しない医薬品流通システム

的外れな残薬確認の意義と、真の解決策の続き。

前回も書いたように、私はお上が音頭をとっている”薬剤師による残薬確認の意義”には否定的です。「塵も積もれば〜」とは言うけれど、巨大集塵機を使わずに人の手で塵を積み上げさせようとしているあたり、「骨折り損のくたびれ儲け」になるのは目に見えています。

福岡市では節薬バッグなる運動もあるようで(ブログ読者からの情報提供)一定の効果を上げているようですが、こうした地域・個人レベルでの取り組みは、いわば人の手で塵を集める行為。目の前の患者さんの負担を減らすのには効果的ですが、国の医療費に対する効果は誤差範囲。

ではどうすればいいか?

薬剤師が人海戦術でもって残薬確認をするのではなく、医薬品市場の流通の最適化を行い(患者宅ではなく)流通過程にある不良在庫を削減すること、が前回の結論でした。

文末に書いた3つの解決策を順番に。


1.処方単位と医薬品包装単位の共通化


薬局の構造的問題として、100錠包装で購入しているのに14錠や28錠しか使わず、86錠や72錠残ってしまうことが挙げられます。もちろん回転すればほぼ問題はないのですが、全品目これなので中には不良在庫となるものも少なくありません。

これを、例えば1日2回服用する薬では7日分を一単位とし、1箱ないし1瓶14錠入り。14日分の処方なら2箱ないし2瓶渡す。もちろん医師の処方も7の倍数の日数を基本とする。このようにすれば端は発生しませんし、調剤に必要な時間も劇的に減ります。(そして調剤ロボットに置き換えられ、薬剤師の仕事も劇的に(ry)

もし不良在庫になりそうな薬があれば返品すればいいわけです。100錠包装で残った72錠を返品することはできなくても、このシステムであれば未開封が当然なので可能。受け取った卸は他に転売するなり、メーカーに返品するなりできます。

海外では瓶に入れた錠剤を渡すのはわりと有名ですね。実際には形状は何でもいいです。ひと箱に14錠のPTPシートが入っていても瓶で入っていても、そこはどちらでも。「PTPから瓶に変えると患者が不安に思うのでは」という意見もありますが、多くのOTCは瓶詰めです。大丈夫なはず。

そういえば日医工が42錠包装(1日3回14日分)のような商品を一部作っているようですが、これを考慮してでしょうか?だとしたらGood Jobですね。


2.製薬会社の不当な儲け方を禁止する


やってることはセコいですが、なんせ規模が大きいので莫大な無駄(と製薬会社の利益)を作り出しています。これを禁止すれば無駄に多い品目数を減らすことができ、業界全体で様々な無駄(お金&労力)がカットできます。

関連記事:製薬会社の不当な儲け方


3.製薬及び卸会社の合併統合淘汰を進める


製薬会社多すぎです。昔はそれでよかったのかもしれませんが、新薬の創出が頭打ちで市場が成熟している今、新しい作用機序が発見されればイナゴのように群がりゾロ新薬をゾロゾロと出すだけの新薬メーカーは不要です。

関連記事:DPP4阻害薬はゾロ新薬の極み

さらに、医薬品の特許が切れれば先発医薬品メーカーですら一緒になって、同じくイナゴのように群がりゾロをゾロゾロと出す。異名同成分の薬が30種類以上あるとか異常。

関連記事:アレロック錠の後発医薬品、満を持して発売

そして卸も中小零細が無駄に多いですね。何度も書いていますが、卸はスケールメリットが働くので最大手一社いれば他の会社は不要。せめて自動車メーカーのように数社。

関連記事:医薬品卸業界が今後求められる方向性

評判の悪い以下のニュースも、これを受けて業界が少しでも再編に動いてくれるなら御の字。民間企業とはいえ規制業界ですし、法の根拠はなくとも厚労省が音頭を取れば動かざるを得ないのでは。武田のようなメガファーマ、参天のような専門特化、そして沢井のようなジェネリックの3タイプに収束で。

YOMIURI ONLINE 再編必要な業界、国が公表…「新陳代謝」で強化
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130821-OYT1T01461.htm


そして、このような流通の最適化を受けて行うのが、薬価の引き下げです。残薬消化で○億円節約とは言いますが、薬剤費は全体で兆クラスですから薬価1割2割の削減が数千億円規模の削減になります。

「残薬の消化」は目的ではなくあくまで手段。目的を「医療費の削減」とするなら他にもっと有効な手段はたくさんあります。ただ、本当に有効な手段は誰か(利権団体)の痛みになるため知らんぷりをされていて、人海戦術で行う「骨折り損のくたびれ儲け」でお茶を濁している、という構図です。「皆がこれだけ頑張ったのに効果が出ないんだから仕方ないね」というアリバイ作りでしかありません。

また、もし残薬の消化で莫大な金額が節約できたというのであれば、それは「服用していないこと」の方を問題にすべきであり、逆にきちんと服用しているのであれば残薬消化は金額にしてさして効果を上げないでしょう。


まとめます。

「医療費の削減」という目的を達成するために「残薬の消化」は効果が薄い。流通の最適化や異名同成分医薬品の品目数削減に続く薬価の引き下げ、あるいはジェネリック医薬品のさらなる推進など効果の大きい施策でもって目的を達成すべきであり、「残薬の消化」については「医療費の削減」というよりは「適切な医療行為の遂行」という意義でもって別途行うべし。

こんな感じでしょうか。


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