2013年10月9日水曜日

e−お薬手帳の問題点

大阪府薬剤師会が推進しているe−お薬手帳。今年2月より箕面市で試験的に始まり、9月より府内全域での本格運用を目指している、とか。

先日大阪で行われた日本薬剤師会学術大会でもブースがあり、専用リーダライターの販売まで始めたようで、いよいよ本格的に動き始めているのかな?(今のところうちの薬局には来てないけど。)

ただ、いろいろ情報を集めてみたところ「やっぱりこれは悪手じゃないか」感が拭いきれないので、改めてまとめました。

大阪e−お薬手帳 公式
http://www.e-okusuritecho.jp/


1.国の方針とズレている


紙ベースお薬手帳普及策の愚で書いた通り、国としては紙ベースのお薬手帳の普及を後押しする格好になっています。薬剤服用歴管理指導料を算定するには紙のお薬手帳が必須で、スマホに入っているアプリでもって算定する、というのは認められません。

これは大阪府薬剤師会の人も理解しているようで、「紙の手帳も合わせてお持ちください」と呼びかけています。過渡期なので仕方ない一面もありますが、なんだこれ、ですね。


2.プラットフォームの乱立


e−お薬手帳は大阪府薬剤師の取り組みですが、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会が以下のような動きを見せています。

CBNews 三師会がお薬手帳アプリ、10月に公開
http://www.cabrain.net/news/regist.do;jsessionid=5B1736EC2C283AB51E9BEDD8493E9BF4

業界最大手のアインファーマシーズが独自アプリをリリースしているのは有名ですし、他にも有象無象入り乱れる大接戦です。少ないパイなのに。



3.使い勝手が悪い


何よりコレ。医療機関ではお薬手帳を見せる必要があるわけですが、電子お薬手帳の場合スマホを預ける必要があります、しかもロックを解除した状態で、です。これは根本的にサービスのデザインを間違っていませんか?結局、子供を持つ母親の薬自己管理アプリという位置付けになりそう。

あと、今回処方の内容を患者手持ちの端末にコンバートする方法はふたつ。レセコンからQRコードをプリントアウトしてスマホで読み取るか、AndroidかつFeLiCa対応機種ならリーダライタ経由でピロ〜ンも可能。

大阪府薬剤師会が配布している専用リーダライタは会員なら2万円、非会員なら5万円らしいけど

SONY 非接触ICカードリーダー/ライター PaSoRi(パソリ) USB対応 RC-S380
ソニー(SONY) (2012-10-10)
売り上げランキング: 173

こういう汎用品じゃダメなのかな?2千円台なんだけど…。問い合わせてみると「動作検証をしていません。専用リーダライタじゃないと動作しないという意味ではない」とのこと。ほほぉ…

Androidの、FeLiCa対応機種に、QRコードを印字する手間を省くためだけに2万円ないし5万円のリーダライタを買わせようとするとは、大阪府薬剤師会、お主もワルよのぉ…


じゃあどうすればいいって言うんだ!?


と聞かれたら、やはりローカル保存ではなくクラウド化し、必要なときに外部からアクセス可能にするような仕組みが必要。そして新規処方分のコンバートも、QRコードなどのアナログ操作を介さず、ぼったくりリーダライタなんて使わず、シームレスに行える仕組みが必要。

また、FeLiCaやNFCではなく、iBeaconを使うと面白そうですね。医療機関内にその人がいるときのみ情報の参照が可能、とか。このあたり細かいデザインは議論の余地あり。


そうなるともう根本的に違う形になりそうですね。やっぱりお薬手帳の電子化なんて悪手です。時代は車なのにより早い馬の走らせ方を論じても無駄。

動かざること山の如しな大本営に痺れを切らして「我々だけででも何か始めよう」という気持ちならまだしも、リーダライタ5万円というあたり普及させる気ゼロとしか思えませんし、そもそも目的ではなく手段に拘泥している悪い例です。

関連記事:お薬手帳なんて本当はいらない(e-お薬手帳も同じ)