2014年6月23日月曜日

「この薬強いですか?」という質問の意図するところ


「この薬、強いですか?」

投薬中によく聞かれるこの質問。いつも答えに窮してしまいます。

というのも、質問の意図するところを読み取らないと頓珍漢な回答を返してしまうことになるからです。

2パターンに分けました。


1.作用の強さ


つまり、「この薬、効きますか?」という意図で聞いている場合。

例えば鎮痛薬。カロナールなら「いえ、弱いです」となりますし、ボルタレンなら「はい、強いです」と答えることになります。

(もっとも、「この薬は弱いので効きません」と言うメリットはないのでもうちょっと突っ込んで事情を聞き、例えば「作用は弱めですが、妊娠中でも服用できる比較的安全な薬です」などのような言い方をするのがいいでしょう。)


しかし、抗菌薬であれば「強いのか?」という質問は適切ではありませんね。「(抗菌スペクトルは)広いのか?」あるいは「○○に比べて○○菌に対する有効性はどちらが上か?」と聞くのが正しい。素人には無理ですよね。


また、抗アレルギー薬の作用の強さは一般的にアレロック>タリオン>アレジオン>アレグラだと言われていますが、個人差もあるので一概には言えません。アレロックで効かずアレグラが効くという人もいるでしょう。


あるいはステロイド外用薬の強さであれば、デルモベート>アンテベート>ボアラ>ロコイド>プレドニゾロンのように序列が決まっていますが、これも塗布する部位や患部の状態、症状の強さにもよるので注意。



2.副作用の強さ、頻度


つまり、「重篤な副作用がありますか?」あるいは「よく副作用起こりますか?」という意図で聞いている場合。

重篤な副作用といえば、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)が有名ですね。皮膚や粘膜に紅斑やびらんが現れ、高熱や悪心を伴い、死に至ることもあります。ありとあらゆる薬で発現の可能性がありますが、頻度は非常に低いです。

対して、ディフェリンゲルは副作用の頻度が高いことで有名です。添付文書に記載の通り、フェーズⅢで8割近い患者に副作用の発現があったようですが、症状はカサカサしたり赤くなったりヒリヒリしたりと軽微なもの。

ディフェリンゲル0.1% 添付文書pdf


また、大事なのはそうした副作用が起こったときにどうするかです。SJSや横紋筋融解症なんて起こったらすぐに服用中止して病院へダッシュですが、パシキルの吐き気やベセルナの紅斑なんて使用継続ですよ。この「どうするか」を患者は聞くべきですし、薬剤師は言っておくべきです。




おそらくは薬の有効性というよりは副作用について聞きたいというケースが多いのではないでしょうか。そして「よく効く薬は副作用も強い」というイメージが根底にあるような気がします。もちろんそういうこともあるし、そうではないこともあります。


薬剤師としては患者が何を知りたがっているのかを読み取り、聞き取り、適切な指導をすること。

患者としては「この薬、強いですか?」ではなく、「この薬はどんな副作用がありますか?頻度は?」とか「その副作用が起こったときは服用中止ですか?継続ですか?」という聞き方をした方がよいかと思います。


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