2014年6月9日月曜日

処方せんの裏に調剤録を印字するのはやめろ


薬剤師法施行規則第十六条(調剤録の記入事項)
法第二十八条第二項の規定により調剤録に記入しなければならない事項は、次のとおりとする。
一  患者の氏名及び年令
二  薬名及び分量
三  調剤年月日
四  調剤量
五  調剤した薬剤師の氏名
六  処方せんの発行年月日
七  処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の氏名
八  前号の者の住所又は勤務する病院若しくは診療所若しくは飼育動物診療施設の名称及び所在地
九  前条第二号及び第三号に掲げる事項

ということで、薬局では受け付けた処方せんごとに”調剤録”なるものを作成します。レセコンに入力すればボタンひとつでプリントアウト可能で、入力内容の確認に便利です。

しかしこの”調剤録”、一部地域では”裏うち”と呼ばれています。意味不明ですよね。なんと、「処方せん原本をプリンタの手差しトレイにセットし、処方せんの裏に直接印字する」のでこう呼ぶようです。

これを知らない薬剤師は驚き、それしか知らない薬剤師は「え、違うの?」というリアクションのようですが、コレやめた方がいいですよ。


紙代の節約


なんでこんなことしてるのかって言えば、当然紙代の節約ですよね。

大手では調剤録はたいてい白紙のA5用紙に印字し、それを糊で処方せんに貼り付けます。中小では処方せん原本に直接印字することで、このA5用紙にかかる代金を節約しているわけです。


いくら節約できているのか?


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紙はこれを使うとしましょう。数量2以上で1箱(5,000枚)あたり2,403円。ゆえに100枚あたり48.06円ですね。

例えば月あたり処方せん枚数が1,000枚の小規模薬局では、480.6円。3,000枚だと1,441.8円。5,000枚だと2,403円です。(実際には入力ミスや処方変更で1割増しくらいになるはず)「え、それだけ!?」と思う人もいれば「わりと節約できるな」と思う人もいるかもしれません。



続いて”裏うち”によるデメリット。

紙詰まりによる処方せん原本の汚損


プリンタは長く使ううちに、必ず紙詰まりが起こります。白紙ならまだしも、処方せん原本をプリンターに食べられた日には最悪です。

すぐ近くのメイン処方元ならまだしも、遠くの病院の処方せんならどうします?再発行してもらえるとして、取りに行くコストは?

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くしゃくしゃの処方せんや、雨の日の濡れた処方せん


また、処方せんは必ずしもきれいな状態では持ち込まれません。くしゃくしゃにしてあったり、雨が降っていて濡れていたりすると、紙詰まりの確率が格段にUPします。


入力ミスや処方変更で、どのみちA5用紙が必要


”裏うち”後に入力ミスが発覚、あるいは患者要望からの疑義照会→処方変更があった場合、もう一度上から”裏うち”をするわけにはいかないので、結局白紙のA5用紙に印字し、上から糊で貼ることになります。

さらに、処方せん1枚に対して調剤録が2枚に渡った場合も同じくですし、裏に独自の書式が印字されてある処方せんも”裏うち”には向きません。


プリンターの寿命を縮め、業務に支障をきたす


紙詰まりは確実にプリンターの寿命を縮めます。高価なプリンターを粗末に扱い、安い紙を節約するのはケチというかバカです。

それに、紙を取り除けばすぐに使えることもあれば、完全に使えなくなることもあります。後者は場合によっては業務がストップします。月1,000円前後を節約するために抱えるリスクとして大きすぎると思うのは私だけでしょうか?


余談ですが、某メンテの人曰く「体感ですが8割ほどの薬局で”裏うち”をされています」とのこと。おかげで引っ張りだこらしいです。出張メンテは定額負担金を徴収すればいいのにね。



結論

調剤録は白紙のA5用紙に印字しようぜ


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