2015年5月25日月曜日

外用薬を混合するにあたって知っておくべき7つのこと

画像引用元:軟膏・クリーム配合変化ハンドブック―処方・調剤の適正使用ガイド

コンプライアンスの向上に寄与するとして皮膚科医の85%が行っているという「外用薬の混合処方」。薬局としても多少の手間はかかるものの、1つにつき80点の加算が算定できるため、通常歓迎されますね。

とはいえ、「混合処方の臨床効果および副作用に関する基礎的なデータはなく、根拠なしに経験的に行われているのが現状であり、十分な設備をもたない医療機関における希釈は有害無益なもの」とする意見もあるようで。

個人的には後者に同意します。せっかく製薬会社が無菌環境で製造し厳しいチェックを通って出荷されてきた製品なのに、それを開封し、あまつさえ混合するとは。含量の正確性や混合の均一性が不安定で、汚染のリスクもあり、さらにエビデンスがないとなるとリスクがベネフィットを上回るのではないか?と。

それはさておき、85%の皮膚科医が行っているということで、薬剤師としても外用薬の混合処方に無知ではいられません。知っておくべきことを7つにまとめました。


1.混合方法ごとの特長


以前書いた以下記事参照。

関連記事:外用薬の混合方法3つと、それらのメリット・デメリット


2.軟膏剤の混合可否は基材性質ごとに一般化できない


TOPの画像参照。◯と×にはっきり分かれてくれればいいんですが、△(組み合わせによっては可能)も。o/wないしw/oの乳剤性基剤が問題になってくるわけですね。

これも、「o/w同士、あるいはw/o同士はOK」なら話はわかりやすいんですが、そのような単純化はできないようで。完全に「モノによる」状態。

配合不適の場合、具体的に何が起こるかと言うと、主薬含量の低下、シャーベット状などの状態変化、水の分離(とそれに続く細菌増殖)など。配合不適は避けるべきです。

というわけで、以下のような書籍をリファレンスとして薬局に備えておくことが望ましいですね。各軟膏同士の混合結果が400ページ近くに渡って網羅されています。




3.混合後の使用期限は4週ないし8週


配合OKの場合でも、使用期限は4週ないし8週です。これはモノによるので上記書籍などリファレンスを参照してください。

とはいえ、既成品のチューブも開封後治癒後は廃棄するのが基本なので大差はありませんが。


関連記事:「余った薬は捨てろ」「他人に薬をあげるな&貰うな」の理由


4.ステロイド外用薬は希釈しても作用が減弱するとは限らない


例えば、アンテベート軟膏0.05%を白色ワセリンと1:1で混合すると、アンテベート軟膏0.025%になり効果は半分、副作用も半分になるか?と言うと、なりません。

実は主薬はすべて基剤に溶けておらず、白色ワセリンで希釈するとそれらが基剤に溶けていくため効果は変わらないことがあります。(ただし作用時間は短くなる)

飽和食塩水にさらに大量の塩を入れて溶け残っているところに、水を足すとどうなるか?と考えるとわかりやすいでしょうか。

ただし、これもモノによります。特にクリーム剤は飽和していないことが多く、希釈すると濃度の低下が見られます。


参考リンク:鳥居薬品診療お役立ち動画
(第2回調剤編の4.ワセリンによる希釈)


5.尿素製剤との混合は含量低下or皮膚透過性UP


ステロイドは本来pHが酸性で安定です。17位モノエステルタイプのステロイド(ex.ロコイド、ボアラ、リンデロン-V、ベトネベート)は、pHがアルカリ性に傾くとエステル転移を起こし著しく含量が低下します。特に問題になるのは尿素製剤との混合。

ただし、尿素製剤との混合は皮膚透過性を亢進することもあるようで。例えば、リドメックス軟膏は単独よりも尿素製剤と混合した方が強力な効果を示します。

なお、機械での混合は乳化の破壊が起こる可能性が高く、これは顕微鏡下で観察しないとわかりません。できれば乳剤性基剤のものは手混ぜするか、そもそも乳剤性基剤のものは混合しない。

参考リンク:鳥居薬品診療お役立ち動画
(第2回調剤編の2.基剤の相性)


6.液滴分散製剤は混合不可?


画像引用元:軟膏・クリーム配合変化ハンドブック―処方・調剤の適正使用ガイド

例えば、アルメタ、フルメタ、プロトピック、オキサロールなどは”液滴分散製剤”といって上記のような構造をしています。これを機械でブン回すことによって細かいつぶつぶが合体してしまい、治療効果が低下する可能性がある、らしい。

とはいえ、「いや、ちゃんと効いてるよ」と体験的に話す医師も多いようで本当のところはわかりません。冒頭に書いた通り、治療効果のエビデンスもなければ治療効果低下のエビデンスもありません。どうなんでしょ。


7.先発医薬品と後発医薬品は混合において同一ではない


後発医薬品(ジェネリック医薬品)は先発医薬品と添加物が異なることから、配合適or不適も異なることがあることに注意。「ヒルドイドソフト軟膏がOKだからビーソフテン油性クリームもOK」とは考えないように。

逆に、「ジェネリックはダメ」とも一概に言えません。先発医薬品とは別商品として、きちんとリファレンスで確認すれば使用は可能です。



関連記事:白色ワセリン、親水ワセリン、親水クリームの違い