2015年5月27日水曜日

製薬企業が儲からなくなると新薬ガーは本当か?



私はジェネリック医薬品推進派ではありますが、上記の通り「先発医薬品メーカーが特許切れ医薬品を総括原価方式によって算出された薬価で販売する」が本当は最適解だと思っています。(現実的に実現可能かどうかはさておいて…。)

ここまで極端でなくとも、さらなるジェネリック医薬品推進によって先発医薬品メーカーの利益が減ってくると、「このままでは研究開発費が捻出できなくなり、新薬がでなくなる」という声をよく聞きますよね?

これって本当なんでしょうか?

実際のところ、「研究開発費」ってどんなもんなんでしょう?


大手三社の財務諸表を見てみます。


【武田薬品】


第137期有価証券報告書より、連結損益計算書の一部です。

売上総利益に対する研究開発費の比率は前年度が29.4%、当年度が28.4%。
ちなみに販管費は46.9%、46.3%。


【アステラス製薬】


第9期有価証券報告書より、連結損益計算書の一部です。

売上総利益に対する研究開発費の比率は前年度が23.6%、当年度が23.7%。
ちなみに販管費は47.4%、49.0%。


【第一三共】


第9期有価証券報告書より、連結損益計算書の一部です。

売上総利益に対する研究開発費の比率は前年度が28.1%、当年度が26.7%。
ちなみに販管費は56.9%、57.7%。



各社大きくは違わないので、だいたいこれくらいが相場だと思われます。すなわち、利益の1/4を研究開発に、利益の1/2を販管費に投入。

これが「研究開発よりむしろ販売に力を入れている製薬会社」と揶揄される所以ですね。販管費の内訳が不明なのでこれだけでは何とも言えませんが、数字は事実です。少なくとも、利益が減って捻出できなくなるのは研究開発費よりむしろ販管費でしょうね。



また、”研究開発”とは言っても「新しい作用機序や受容体などの発見を各製薬会社が個別に行っているわけではなく、税金が投入されている機関での研究がベースになっていて、製薬会社はそれに基いて化合物を作っているだけ。」という説も。

確かにDPP-4阻害薬にしても、SGLT2阻害薬にしても、新薬といいつつゾロゾロ発売されたもんね。ゾロ新ってやつ。

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さらに言うと、昔と違って今では必要な薬はほぼ揃っています。もちろんまだ治療不可能な疾患や実現していない医薬品はありますが、抗生物質も、鎮痛薬も、降圧薬も、抗てんかん薬も、ED薬ですらかなりのラインナップです。

かつてはプラセボと比較して有意差があれば医薬品として承認されてきましたが、あるときから「既存薬と比較して有意差があれば」に変わり、同効薬の乱立は食い止められましたがそれでもほとんどのカテゴリーで飽和状態です。単に力価を増やしただけの新薬も。


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「今までの薬は85点の効果でしたが、こちらの新薬では87点の効果です!」こんな感じで費用対効果悪く100点を目指すよりは、85点の薬を低コストで社会全体に行き渡らせる方に社会的意義を感じます。少なくとも私は。そのために必要なのはジェネリック医薬品ではなく、薬価を下げた先発医薬品だと思っています。

とはいえ、医療が国営化されている国は数あれど、製薬会社が国営化されている国はありませんよね?(一部の共産圏除く)総括原価方式による公定薬価なんて夢のまた夢なんでしょう。


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