2014年12月12日金曜日

マイナンバーの医療分野への活用の雲行きが怪しい件


2016年1月より開始が予定されているマイナンバー。いわば国民総背番号制であり、社会保障や税などを一元管理する番号となります。

そもそも複数の行政機関でまったく別の番号を生成して非効率な運用となっているのは先進国では珍しいらしく、日本の恥の一つだと私は思っています。きょうびナイジェリアですらMasterCardつきの国民IDカード配布してるよ。

さてそんなマイナンバー、医療分野への活用も期待していましたが、先日薬事日報で見かけた記事を見てビックリ。さらにいろいろ調べていくと、どうやら雲行きかなり怪しいですね…。



なんと、三師会(日本医師会、日本薬剤師会、日本歯科医師会)が「マイナンバーとは別の番号が必要」との声明を出しました。

そりゃマイナンバーに対応した別番号を生成するなんて一度システムを組めば簡単だしそれぞれの名寄せも可能だけど、あえて別番号を作る意味なんてあります?しかも「国民が自分の意志で変更可能」ときた。

さらに


先の記事によると「見えない番号」とは「覚えきれない文字」のことらしい。でも機械だと覚えきれないなんてことはないし、要は「知られてはいけない番号」ってことで、ID/PASSが一体化してるのが「見えない番号」って感じなのかな。本来のID部分は誰に知られてもOKなので「見える番号」ってこと?


厚労省にてこんな資料を見つけました。「電磁的な符号」はどうやらICカードなどに記録された特定の数字や記号?カードを持ち歩く必要がありますね。どの道IDカードは発行されるでしょうけど、番号を覚えていれば不要な「見える番号」と比較して不便である点は否定できません。

機関別符号に至ってはやり過ぎ感がありますね。違う医療機関を利用するたびに「電磁的な符号」を新たに発行する、それを全国で全国民がとなると膨大なデータに。識別コードをたくさん発行するとどうなるか、厚労省は過去の事例から学んでいないようで。昔は人今は機械が処理するとはいえ、既存の医療機関コードを使った単純な紐付けの方がシンプルでいいんじゃないでしょうか。

レセプトの返戻請求、取下依頼のやり方では返戻請求の際に医療機関コードはもちろん医療機関名すら使わない不思議な書式に疑問を呈しましたが、相変わらずアホなシステムでいくんでしょうか。



こんな感じで相当雲行きが怪しいんですが、どうやらずいぶん前から別番号という方向で動いていたようで。以下参照。

医療等分野における番号制度の活用等について (これまでの議論の経緯、研究会の検討事項等)平成26年5月

医療等分野における番号制度の活用等に関する研究会 中間まとめ(案)pdf

・ 医療等分野でやりとりされる情報は、機微性が高い情報を含むので、所得情報などと安易に紐づけされない安全かつ効率的な仕組みが必要である。マイナンバーとは異なる医療等分野でのみ使える番号(医療等ID(仮称))や安全で分散的な情報連携の基盤を設ける必要がある
・ 医療等ID(仮称)と医療等中継DB(仮称)(医療等IDと既存の管理番号を紐づける仕組み)については、関係者と調整しつつ、詳細な仕組みや利用場面を、具体的な分かりやすい形で、できるだけ速やかに提示し、その必要性を含め検討する必要がある
・ 情報連携の基盤は、二重投資を避ける観点から、政府全体の情報連携基盤として構築される社会保障・税番号法に基づくインフラと共有できる部分は共有することも検討すべき

確かに医療関係者が所得情報を参照できるのはマズイですね。しかしそれを解決するのに「別番号を生成する」という手段しかないのかというと、もちろんそんなことはありません。

例えばアクセス権限を設定して医療機関ないし医療関係者は医療情報のみにアクセス可能にするとか、いつどこの誰に何を閲覧されたか履歴が残るとか、本人による閲覧許可がリアルタイムで必要とか、不正アクセスには重い刑事罰を課すとか手段はいろいろあります。

(閲覧履歴についてはマイポータルという仕組みが既に予定されているようで、マイナンバー開始から1年遅れの2017年1月より開始予定)


マイナンバーの民間利用は(最初のうちは)禁止されているとのことで、医療分野でもそれは同じだお前らで別に番号を作れという話ならまだわかります。でもどうやらそういうトーンじゃないですよね、「必要だ」と積極的ですし。


はてさてどうなることやら。

次回は医療業界におけるマイナンバーのあるべき理想の姿を書きます。
乞うご期待。


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