2014年6月6日金曜日

麻薬は面分業しない方がいいんじゃない?(なんなら抗癌剤も)

(画像:日本緩和医療学会より転載)

私は常々「麻薬処方せんは門前ないし病院で調剤した方がいいよね」と思っていますが、麻薬が処方されるということは癌患者であり、そうなると抗癌剤も…ですよね。

そんな矢先、以下のような記事が話題になっていました。

RISFAX 「抗がん剤」を院内処方に切り替え 東京女子医大 1月から開始、医療安全・経営面で一致

もちろん賛否両論、侃々諤々の議論があちこちで巻き起こっているようですが、発端である東京女子医大の言い分は大きく分けて2つ。

1.医療上の理由
2.経営上の理由

これらについて思うところを書いてみました。


1.医療上の理由


疾病、治療、臨床上の知識が乏しいなど、薬剤師の質にバラつきのある薬局よりも、ハイリスク薬は院内で患者に渡すほうが「医療安全上よい」

らしいです。これについてはほぼ議論の余地なしと思っています。

薬剤師の職能うんぬん意識高い系や、食い扶持うんぬん旧来型の薬剤師はなんとか反論しようと論陣を張ってるようで、それはそれで正しい行動です。

しかし客観的に考えてみてください。

癌や疼痛医療が専門である医師と同じ病院で働いている病院薬剤師と、色んな病院から色んな処方を受ける薬局薬剤師。「疼痛医療に関する質にバラつきがある可能性が高いのはどちらか」と聞かれたら、当然後者なわけです。

それに、患者がどこの薬局に行くのかはコントロールできません。A薬局は質の高い薬剤師がいるかもしれませんが、B薬局には質の低い薬剤師しかいないかもしれません。

さらに言えば、病院薬剤師は診療情報にアクセスできますが、薬局薬剤師にはそれはできません。

まとめると、システム上仕方ない面が多いということです。制度面の問題を薬剤師個人の不努力にすり替えて論じるのはよくある間違いではありますが。


2.経営上の理由


いわゆる薬価差益です。麻薬も抗癌剤も高額なので、薬価差益は高額になります。%計算ですからね。

管理コストなどを考えると、薬価差益は必ずしもオイシイとはいえないんですが、病院はなんせ処方元ですからコントロールしやすく、ごくごく一部の高額医薬品のみを扱うのであれば、ほぼ間違いなく儲かります。

そりゃ病院の経営陣は自社で抱えたいでしょうし、対する薬局の経営者が「そんな、高額品目だけ引き上げるなんてズルイ」と考えるのも無理からぬ話。

とはいえ、いかなる理由であれ「院内処方に戻す」と病院が言えば薬局には事実上対抗手段はないわけです。なんだかんだいっても薬局は下請けですからね…。

関連記事:それでも薬局はつぶれる



さて、私個人的な意見ですが「麻薬(および抗癌剤)は院内処方でいいんじゃないか」と思う理由は以下の通り。


流通など効率問題


院内処方だと麻薬の流通は病院に集中することになり、院外処方だと各薬局に散ることになります。どちらが効率的かは言うまでもないですね。

防犯など安全性の問題


麻薬は全医薬品中最も管理が厳重です。取り扱いは免許制で、納品も厳重、返品不可、金庫に入れ、数量を管理し、廃棄の際も届出が必要。万が一数量違いや盗難などがあれば警察沙汰です。

こんな品目、日本全国の薬局に散らばるよりも、まとめて処方元の病院にある方が防犯上いいでしょう。


こんなこと言うと、「麻薬や抗癌剤に限らずもう全部院内処方でいいじゃん」って話になりますね。確かにそうなんです。

ただ、「調剤技術料って何?つめるだけでしょ!」と拒否されたらで書いた通り、ときの政権が医薬分業を推進した結果が今なわけですから。これを逆回しするとなると、当然「薬剤師の食い扶持ガー」という人が多数になるのも無理からぬ話。ただし、これは他業種でも同様。


ということで、院内処方というか医療を国営化してしまうか、さもなくば間を取って麻薬および抗癌剤のみ院内に戻すってことでいいんじゃないかい。

関連記事:医療は国営化&無料化すべきでは?その1