スイッチOTCが発売されるとかで、何かと話題のエパデール。
高脂血症薬として初めてのOTCということで期待も高いようですが、医師会からの反対もずいぶんあったようです。言い分としては「高脂血症の裏に隠れている糖尿病などを見逃す恐れがある」「薬物療法に頼り、食事療法や運動療法がおろそかになる」。わからないでもない言い分。
が、医師会の反対むなしく、賛成多数でOTCへのスイッチ化の承認が降りたようです。
医療介護CRNews
エパデールOTC、薬食審分科会で承認了承
http://www.cabrain.net/news/regist.do
通した側の事情としては「少しでも医療費削減になれば」らしい。
はたしてどうでしょう?
私は3つの点でエパデールのスイッチOTC化に疑問を持っています。
1.医療用医薬品よりもOTCの方が高額
例えばガスター10を例に上げると、6錠で1,029円。1錠あたり171.5円。
対して医療用のガスター錠10mgは、1錠薬価が28.6円。
価格比はなんと6倍。
アレジオン10は、6錠で1,280円。1錠あたり約213円。
対して医療用のアレジオン錠10mgは、109.5円。
価格比は約2倍。
最近発売されたアレグラのOTCは、14錠で1,314円。1錠あたり約94円。
対して医療用のアレグラ錠60mgは、1錠薬価が75.6円。
価格比は1.24倍。
品目にもよりますが、OTCの方が安いということはまずないでしょう。アレグラは頑張ってますね。
ちなみにエパデールS900の薬価は1包127円です。仮にOTC化して価格比2倍として、1日2回、30日服用するなら1ヶ月合計15,240円です。
「誰が買うんだよ!」というツッコミはさておき、これでどう医療費を削減するんでしょ?健康保険適用分から外れてくれたらOKってか。
関連記事:OTC医薬品は医療用医薬品と比べて効かないのか?
2.エパデールの服用が適正かどうか不明
これは医師会の言い分を支持する形になってしまいますが、はたしてエパデールの服用は適正でしょうか?スタチン系の薬を飲むべきレベルかもしれませんし、食事療法で頑張るレベルかもしれません。
「自己責任で」と言おうにも、そもそもTG値やLDL-C値は血液検査をしないとわからないし、自覚症状は皆無。「病院行くの面倒だけど、俺高脂血症だからOTCで…」というのは無理がある気がします。
と、思ってたら以下の記事が。
医療介護CBNews
エパデールOTC、医療機関の受診必須に—セルフチェックシート内容を変更
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38954.html
結局、医師会が利権を守り通したということで。さすがですね!
3.後発医薬品の流通が止まっている
1年近く前からですが、現在エパデールの後発医薬品(ジェネリック医薬品)の流通に問題が発生しています。
RIS FAX
EPA後発品 原薬不足、出荷調整が長期化
http://www.risfax.co.jp/risfax/article.php?id=39321
20社以上から発売されているすべての品目が供給不足。メーカーに問い合わせてみると、原料(イワシ)の調達が困難になっているため、既存の取引先にはなんとか卸せるけれど、新規は無理とか。
先発医薬品メーカーの持田製薬は供給に不安はないらしく「さすが先発医薬品メーカー」と思っていたら、武田薬品からロトリガ粒状カプセルが発売、EPAとDHAの配合剤らしい。ちょっとちょっと、EPAの原料はどうやって仕入れてるの…?
ちなみにエパデールS900の後発医薬品の薬価は、某メーカーのもので47.2円。先発品の約63%引きです。医療費削減が目的なら、OTCより後発医薬品へ誘導すべきなのは明らかですよね。
関連記事:薬剤師がジェネリック医薬品を推進すべき3つの理由
今後もエパデールの動向から目が離せませんね。
余談ですが、ギリシャ語で20を意味するeicosa は icosaと読み方が変わったため、エイコサペント酸エチル → イコサペント酸エチルと同じく読み方が変わっています。そしたらEPA → IPAではないかと思うのですが、皆さんどう思われますか?
え?どうでもいい?
関連記事:ロトリガ粒状カプセルが発売 押さえておくべきポイント