薬局業界に身を置く人なら誰しも知る、薬剤師の人材不足。数が足りないのはもちろんのこと、質の面でも困った感じの人の多いこと多いこと。すべては数が足りないことからきているわけですが。
そこでよく聞くこの意見
「あんな人でもいないよりマシでしょ?」
どう思いますか?
そりゃ「ゼロになるよりマシ」と言えばそうかもしれませんが、実際には「いない方がマシ」です。そして採用側および会社側(というかオーナー社長側)の欺瞞が隠れています。理由は以下の3つ。
1.仕事を増やす
仕事のできない人は単に仕事が遅かったり、クオリティが低いだけではありません。一言で言えば「要らん仕事を増やす」のです。
わかりやすい例は入力ミスや調剤ミスですね。誤った帳票類を処分し、入力を訂正してすべて出し直し。あるいは誤った薬を戻しに行き、正しい薬を取りに行く。本来1STEPの仕事が2STEPになっています。
あるいは待ちが多数いて調剤トレイが積み上がっているとき、帳票類をきちんとその患者ごとにマッチングして入れていればいいんですが、逆になっていたり。間違っていることに気付き、正しい方に入れ直し×2です。
地味に困るのは、薬歴を片付ける際にあるべき場所と違う場所に入れてしまう人。場合によっては永遠に見つかりません。
また、仕事中の私語。それ自体は別に構わないと思いますが、「状況を考えろ」って人いますよね。調剤待ちトレイが積み上がっているとき、ひと波終わって今のうちに薬歴書こうとしているとき、監査中の人にガンガン話しかけてミスを引き起こしたり、てかお前も監査中だろ!みたいな。
誰しも起こり得ることではありますが、頻度が明らかに常人の10倍以上、しかも何度も指導しているのに一向に改善しない、みたいな人の話です。こういう人は「戦力外」とはいいません、「邪魔」です。
2.伝染する
仕事のできない人は、仕事のできる人に対してネガティブな影響を及ぼすことが多々あります。
例えば薬剤師が2人いる薬局にて、調剤監査を交互に行うにはスピードがほぼ同等でなければなりません。一方が極端に遅い人だと、負荷がもう一方に多くかかります。このときの最適戦略は「遅い方に合わせる」なので、結果、全体としてのスピードは落ちます。(これを熱力学では律速段階といいます。)
あるいは、仕事のできる人はプラスαの仕事をします。抽象的ですが、自分の範囲の仕事をこなした上で、他人の範囲の仕事も少しやる、みたいな。すると相手もそれで返してきてどんどん仕事が早くなる正のフィードバックが生まれます。対して仕事のできない人は自分の範囲すらできておらず、他人の手助け待ち。相手もそのようになり、どんどん仕事が遅くなる負のフィードバックに。
レベルの高い人は同じくレベルの高い人に惹かれる反面、レベルの低い人を嫌い離れる傾向にあります。1もありますが、2を避けるためです。
「すでに強力な学部は、生産性の高い研究者に引きつけられてほかの優秀な研究者が続々と集まってくるので、ますます強力になる。優れた研究者は、弱体化した大学に率先して移籍しようとは思わない。それは、メンツだけが理由ではない。研究の生産性を高めるための判断でもあるのだ。」 #雅の読書メモ
— 雅 (@miyabi0929) 2015, 8月 5
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3.求人かけない
そしてこれ。現場では上記の二重苦の中頑張っているのに、本部(というか採用する人)としては「頭数は足りてるんだから求人かける必要ないよね」となってしまう。あるいは相場以下の条件で募集(つまり、募集を出していないのと同じ)していたり。
特に薬剤師は採用が容易ではないので、この罠にハマっていることが多いのではないでしょうか。とにかくどんなボンクラでもいいから現場に押し込み、文句は受け付けず、二言目には「いないよりマシでしょ?」と言う、これが採用する人の最適戦略。「あんな奴誰が雇ったんだ」という話にならない限り、この行動が改められることはありません。
当然ながら、長期的には困った人材だけが残ることになります。
得意不得意があるのは当然です。しかしどの能力をとっても低い、あるいは戦い方を間違えていて成果をあげれない人、仕方なくこちらが指示しても従わない人、このあたりはどうしようもありません。
私はかなり「仕事のできない人」に対して厳しいかもしれませんが、裏を返せば「仕事のできる人」に優しいんです。前者に優しく接することはすなわち後者に厳しく接することです。するとどうなります?そんなわけにはいきません。
今後も「仕事のできない人」はガンガンdisっていきますし、私自身デキる男であり続けるべく努力します。
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