「配当がない会社の株なんて何のために買うの?」と以前聞かれたので、軽くまとめます。
話の流れとしては以下の通り。
1.当期純利益はすべて株主のもの。
2.配当するか内部留保するかは選択の問題。
3.1株あたり利益(以下EPS)に連動して株価は上がる。
まず1
「自分の取り分は配当のみなんだし、もっとちょうだい」という意見は気持ちの上ではわかります。しかし事実は上記の通り。配当しようがしまいが、企業があげた利益はすべて株主のものなんです。金庫に積み上げている現金ですら株主のものです。
次に2
そしてその株主のものである利益の使い道ですが、全額配当として払い出すのか、はたまた全額内部留保するかは選択の問題です。どういう選択かというと、「どちらが株主のためになるか」です。
内部留保→事業再投資してもEPS向上にまったく寄与しない場合は、会社としてお金の使い道がないということなので、全額配当として株主に配った方がいい。
逆に、再投資によりEPS向上が見込める場合、配当などしている場合ではありません。がんがん再投資してEPS向上に努めた方が株主の利益になります。
最後に3
「でも配当をもらわずにどうやって利益を得るの?」
答えは「株価の上昇」です。EPSが倍になれば株価も上がります。もちろん計算上ですから、変わらないことも十分あり得ます。
ただ、EPSが倍になって株価が変わらなければPER(株価収益率;株式の割安性の指標)は半分になります。だいたい標準的なPERは10~15倍と言われていますが、これが半分になると5~7.5倍、これは相当割安といえるので買いが入り、適正水準まで株価が上昇する可能性は十分あります。
EPSは無成長ながら配当利回りが5%の銘柄を保有する場合と
EPSは5%で成長するが無配当の銘柄を保有する場合と
資産が倍になるまでに必要な期間は、前者が20年(税金を考慮すると25年)、後者が14年です。
再投資と税金の威力を実感しますね。
「でも・・・じゃあずっと配当なしなの?」
いえいえ、そんなことはありません。上記を理解して資産を増やした暁には、高配当銘柄に乗り換えるもよし、あるいは保有していた高成長低(無)配当銘柄が成熟期に入り、配当を出し始めるかもしれません。
つまり、
配当を再投資したい、資産形成層(若年者)は高成長低(無)配当銘柄を
配当を消費に回したい、リタイア層(高齢者)は低成長高配当銘柄を
それぞれ買うのが合理的な行動かと思います。
注意:
低(無)配当銘柄が無条件でいいと言っているわけではありません。重要なのはEPSの向上なので、無意味に内部留保して配当を出さない会社の株は避けた方がいいかもしれません。
また、上記はあくまで数字上の話です。業界動向や技術革新、人口動態や法律の変化、さらには市場の感情や時代の流れなども考慮し、あくまで自己責任で投資を楽しみましょう。