2012年10月1日月曜日

ネキシウムカプセルはインチキ薬?

2012年10月1日より、ネキシウムカプセルの長期投与が可能になりました。添付文書はこちら

アレロック顆粒が長期投与可能にでも書いた通り、新薬は処方日数に制限があり、14日を超える処方はできません。発売後1年経ってから、晴れて15日以上の処方が可能になります。

ネキシウムカプセル(成分名エソメプラゾール)は厳密には新薬ではなく、既存薬であるオメプラール錠(成分名オメプラゾール)のS体抽出物でしたが、投与日数制限が適用されていました。

ちなみに、S体を抽出したオメプラゾールだから エス + オメプラゾール = エソメプラゾール らしい。

さてこのネキシウムカプセル、ちょっと問題アリの医薬品です。
少々つっこみをば。

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ネキシウムカプセルのメリットは3つ挙げることができます。

1.光学異性体であるS体のみの抽出物である
2.遺伝子多型が存在するCYP2C19の寄与度が低く代謝個人差が少ない
3.NSAIDs投与時における胃潰瘍十二指腸潰瘍の再発抑制の適応アリ

どれも事実には違いありませんが、ちょっとどうでしょうか。


まず1
光学活性体の抽出物のはずなのに用量が同じ(10mg錠と20mg錠)なのが気になり、例によってDIに問い合わせてみると、「R体もほぼ同等の酸分泌抑制効果がある」とのこと。つまりラセミ体であるオメプラゾールとS体抽出物であるエソメプラゾールの間に、酸分泌抑制効果に大きな違いはないわけです。

もちろんこれはin vitroの話で、DIが言うには「ターゲット受容体への到達率が違う」そうな。しかし到達率がUPして全体の用量が変わらなければ、そりゃ効果は上がりますよね。でもそれって力価増やしてるだけでは…?例えばGSKのジルテック→ザイザルは10mg→5mgですし。


次に2
オメプラール錠の添付文書より抜粋。

CYP2C19には遺伝多型が存在し、遺伝学的にCYP2C19の機能を欠損する個体(PM)は日本人を含むモンゴル系人種で13~20%、コーカサス系人種で3~4%と報告されている。

モンゴル系人種全体でこの率を大きいと見るか小さいと見るか。そしてこの代謝酵素に欠損があれば薬が効かないわけではなく、逆に効きすぎることになります。これを既存薬へのアドバンテージと言え…なくもないか?


最後に3
オメプラール錠でも適応を取ればいいだけの話。あえて適応を取得せずに新薬に優位性を持たせているあたりアレロック顆粒と同じかな?


【結論】
ネキシウムカプセルは必要性がかなり怪しいアレンジ薬

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そういえば以前読んだこの本でも「ネクシアムカプセル」を酷評していましたね。曰く「単に量を増やして新薬を名乗るな」だそうです。確かにその通りでした。

薬価を書いておきますね。(2012年10月現在の薬価)

オメプラール錠10mg/20mg:88円/153円
ネキシウムカプセル10mg/20mg:96.7円/168.9円
オメプラゾール錠「トーワ」10mg/20mg:48.8円/79.8円

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