「一般市民は、医師と薬剤師がそれぞれの職能を発揮する上では、構造上の分離は不要と見ている傾向が浮き彫りに」←そうかあ?「大半の人は判断しかねるが、必要だと考える人が僅かに多い」でしょ。 / 内閣府、医薬分業に関する調査結果を公表 http://t.co/GveSM5PJQa
— 雅 (@miyabi0929) 2015, 3月 14
ツイートした通りですが、調査結果の読み取りと質問に一部恣意的なところが見られたので、一部私が訂正してお伝えします。
ちなみに調査結果のソースはこちら↓
内閣府「医薬分業における規制の見直し」説明資料pdf
以下、円グラフはこちらより転載します。
「医師と薬剤師がそれぞれの専門知識を生かして正しく診療や調剤を行うためには、医師と薬剤師が、医療機関と薬局に分かれて業務を行う必要があると思いますか」という問いに対しては、「思う」と答えた人は31.6%にとどまり、「思わない」(25.6%)、「どちらともいえない・分からない」(42.9%)と答えた人が多かった。一般市民は、医師と薬剤師がそれぞれの職能を発揮する上では、構造上の分離は不要と見ている傾向が浮き彫りになった。
まずはツイートしたこれ。円グラフで見ると
どう見ても「わからない、判断しかねる」って人が多数派ですよね。続いて賛成派、反対派と続く構図です。つまり反対派は少数派。
どこをどう読み取れば「医師と薬剤師がそれぞれの職能を発揮する上では、構造上の分離は不要と見ている傾向が浮き彫り」になっているのか問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。
「構造分離の要不要」は大多数の国民には判断しかねるが、反対は少数派
院内処方の医療機関で直接薬をもらうよりも、院外処方を行う医療機関から処方箋を受け取り、薬局で薬をもらう方が、同じ薬をもらう場合でもサービス料金(一部負担金)が約300円増えることに関して、「薬局で受けられるサービスの内容に照らして、この価格差は妥当だと思いますか」という問いには、「高すぎると思う」と答えた人が58.5%に上り、「妥当だと思う」と答えた人は14.2%にとどまった。
これは質問が悪いですね。まるで床屋に行って「髪切った方がいいかな?」と聞くようなもの。誰だって自分の利益になる方を選択しますよそりゃ。
「院外の薬局にて薬をもらうことでサービス料金がかかっていますが、それにはこれこれこういうメリットがあります。対する院内処方にはこれこれこういうデメリットがあります。あなたは院内処方を希望しますか?」と聞くべきところ。
調査結果は単に「安ければそれに越したことはない」という人間の当たり前の特性を浮き彫りにしたに過ぎず、これをもって院外処方を否定するのは相当苦しいかと。
「医療機関で院外処方箋を受け取った時、どこの薬局に薬をもらいに行きますか」という問いに対しては、「医療機関からなるべく近い薬局」と答えた人が69.1%に上ったが、20.4%は「普段行き慣れている薬局(かかりつけ薬局)」と答えた。かかりつけ薬局を選ぶ理由(複数回答)としては、「家、職場、学校などに近いから」(135人)が多かったものの、「薬剤師が自分のことをよく知っているから」(58人)、「薬剤師が薬について分かりやすく説明してくれる、よく相談に乗ってくれるから」(49人)など、薬剤師の介入を理由に挙げた人も一定数いた。
「結局7割近くが門前か。かかりつけ薬局普及してないなぁ」と思いますか?逆に、「2割の人にかかりつけ薬局が普及している!」と思いますか?
かかりつけ薬局を選ぶ理由を見ても、薬剤師の介入に価値を感じている人も一部ながらいますね。個人的には自宅付近などの利便性の方が強いと思いますが、実際そちらの方が多いみたいですね(^^;まぁ仕方ない。
ただ、「門前vsかかりつけ薬局」の構図は、今回の「医薬分業の是非」とは無関係ですよね?院外処方箋を発行した時点でひとまず「医薬分業」は成っているのでここは置いておいていいかと思います。
そもそもなんで質問に入れたんだろ?と思ったけど、医療機関からなるべく近い薬局→医療機関内に薬局あれば便利じゃね?と誘導するためでしょうか。
そういう目で見ればいろいろ見えてきますね。「体調が悪化したときどこに相談しますか?」→医療機関が75.8%、「薬剤師から他の薬との飲み合わせのチェックを受けたことがありますか?」→ないが40.9%、「薬剤師が処方せんの内容を確認した結果、内容が変更になったことがありますか?」→ないが77.2%、「処方せんを持って薬局に行ったら薬の在庫がなかったという経験はありますか?」→あるが33.0%、などなど。(日経DIの記事では紹介されていませんが内閣府の資料には載っています。)
一応反論すると、薬剤師に処方変更権はないので「病院に相談してください」と言うケースは多いし、併用薬チェックをしてもそれをことさら患者にアピールすることは少ないし、疑義照会で変更になってもそれを伝えないこともある(というか病院がとんでもない間違いをしていたときはいちいち患者にチクりません)し、処方せんを遠方の薬局に持ち込めばそりゃ在庫がないことくらいあるでしょ。
業界騒然だけどさすがに実現しないんじゃないか。医薬分業を逆回ししたいなら院内処方に戻せばいいだけなのに処方箋発行料は欲しいってあたり言い出しっぺが何者か明らか。敷地内にありつつ経営の独立性もクソもない、いくら何でも無茶でしょ。誰でもわかるのに厚顔無恥によくこんなこと提唱できるな。
— 雅 (@miyabi0929) 2015, 2月 27
ひょっとして「院内薬局」を実現したい勢力が意図的にそういう流れを組んでいるんでしょうか?以前もツイートした通り、「医薬分業」を否定するなら「院内処方」に戻すのがスジでしょ。
「かかりつけ薬局vs門前薬局」で門前の便利さを強調し、「院内処方vs院外処方」で院外処方の高コストや不便さを強調するなら、結論は「院内処方」であり、どう頑張っても「院内薬局」にはなりませんよ?
そういう意味では「薬局のサービス料は高過ぎると思う」とさせた質問はネガティブに働きますが、そこのところ大丈夫ですか?>質問をつくった人
個人的にちょっと嬉しかったのは以下。
その一方で、「医師が必要以上に多い薬や高い薬を処方して利益を追求するのを防ぐためには、医師と薬剤師が、医療機関と薬局に分かれて業務を行う必要があると思いますか」という問いに対しては、「思う」と答えた人は48.0%に上った。
経済に暗い人が多い日本で、この結果はわりと凄いと思います。もちろん業界人か、ある程度経済に明るい人なら少し考えればわかることではありますが、半数近くが正しい回答とは驚き。「わからない」が多いのが体感と合致。「思わない」の人には是非理由を聞いてみたいものですね。
医薬分業でもそうじゃなくても、門前薬局でもかかりつけ薬局でも、ポジトークを除けばどちらでもいい(ときの政権と国民の判断による)んですが、国民置き去りでノイジーマイノリティ(一部のうるさい人達)の利益誘導はいただけませんね。「欲張り村の村長」と呼びましょうか?
ちなみに私自身は「院内薬局」を志向する人たちが最も嫌がる案を志向しています。実際には夢物語ですし、課題山積ですけどね。
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