さて、そろそろ迫ってきていますね、薬価改定。
過去に何度も書いていますが、「棚卸前に在庫を絞る」のは無意味ですが「薬価改定前に在庫を絞る」のは非常に有用です。以下参照。
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要は3/31から4/1になる際に薬価が下がるせいで在庫の価値が下がる、それを少しでも軽減するために在庫を減らしておくわけですね。
さて、今回はその手法の中でも極北である「分割発注を用いて在庫を極限まで絞る」ことの有効性を検討してみたいと思います。要は、「あと10錠だけあればいいのに100錠ひと箱で発注したくない!」ってケース。
はたして効果はあるのか?参考にしてください。
ある品目が薬価改訂を通過する際の損失額(円)は、薬価(円/錠)×下落率(%)×期末在庫数量・・・①となる。
分割発注すると仕入値は薬価そのまま、つまり薬価差益がゼロとなるので、その損失額(円)は、薬価(円/錠)×値引率(%)×分割発注数量
さらに、分割発注して使い切れなかった分(薬価改訂の影響を受ける)を加味すると損失額は、薬価(円/錠)×値引率(%)×分割発注数量 + 薬価(円/錠)×下落率(%)×余った数量(錠)・・・②
「分割発注を用いて在庫を極限まで絞る」が有効になるためには、①>②である必要があるため
薬価×下落率×期末在庫数量 > 薬価×値引率×分割発注数量+薬価×下落率×余った数量
下落率×期末在庫数量 > 値引率×分割発注数量+下落率×余った数量・・・③
これを満たす場合においてのみ、「分割発注を用いて在庫を極限まで絞る」ことは正当化される。
具体的な数字を代入して試してみましょう。
薬価改訂直前において、薬価下落率20%の品目があと20錠足りないので100錠ひと箱を発注するか分割で20錠発注するか、迷っているとする。なお、この薬局の値引率は一律10%である。
薬価下落率が20%、期末在庫数量が80、値引率が10%、分割発注数量が20、余った数量が0なので、これを③に代入すると
0.2×80>0.1×20+0
16>2
この場合はOK
同じ状況において、63錠足りないので100錠ひと箱を発注するか分割で70錠発注するか、迷っているとする。
薬価下落率が20%、期末在庫数量は37、値引率が10%、分割発注数量が70、余った数量が7なので、これを③に代入すると
0.2×37>0.1×70+0.2×7
7.4>7+1.4
7.4>8.4
この場合はNG
ざっくりイメージとしては、「下落率が大きいほど、期末在庫が多くなってしまうほど」この手法の有効性が高まります。つまり③の左辺が大きくなるほど、ですね。すべて計算するのは骨が折れるので、明らかに該当しそうなケースのみ確認するのがスマートかと思います。
さらに、上記の計算はあくまで「この手法の有効性」を判定するのみであり、そもそも薬価が安いと損失額自体が大したことないため無視して構わないと思います。
結論
薬価がある程度高く、かつ薬価下落率の大きい品目にのみ着目し、期末在庫がかなり残ってしまうケースにおいて、この手法が有効かどうか③式に当てはめて確認すべし。
あくまでこの手法は「薬価改訂前の在庫削減の極北」であることを理解し、無駄に時間をかけ過ぎないようにしましょう。節約できる損失額より、我々薬剤師の時間給の方が往々にして高いのですから。
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