PAH(肺動脈性肺高血圧症)に用いられるエンドセリン受容体拮抗薬、トラクリア。普通錠の62.5mgのみでしたが、今年の初頭に小児用分散錠32mgが発売されています。
ポイントをまとめます。
トラクリア錠62.5mg 添付文書pdf
トラクリア小児用分散錠32mg 添付文書pdf
1.剤形の違い
旧来のトラクリア錠62.5mgはいわゆる普通錠であるのに対し、新剤形の小児用分散錠32mgはその名の通り小児に用いる水で分散する(溶ける)錠剤です。
これにより粉砕で調剤していたようなケースでもそのまま渡すことができ、薬剤師のみならず患者本人ないし保護者の負担軽減につながります。
2.用量の違い
これも見ての通り、62.5mgと32mgで用量が異なります。
トラクリア錠62.5mgの添付文書より抜粋。
通常、成人には、投与開始から4週間は、ボセンタンとして1回62.5mgを1日2回朝夕食後に経口投与する。投与5週目から、ボセンタンとして1回125mgを1日2回朝夕食後に経口投与する。なお、用量は患者の症状、忍容性などに応じ適宜増減するが、最大1日250mgまでとする。
続いてトラクリア小児用分散錠32.5mgの添付文書より抜粋。
通常、乳児、幼児又は小児には、ボセンタンとして1回2mg/kgを1日2回朝夕、用時、少量の水に分散させ経口投与する。ただし、最大投与量は1回120mg、1日240mgとする。
小児用だけあって体重あたりの用量設定。体重31.25kg以上で成人と同じになりますね。
関連記事:小児用量は体重増加に伴い成人量を超えないよう頭打ちになる
ただし、普通錠との生物学的同等性なし。再びトラクリア小児用分散錠32.5mgの添付文書より抜粋。
4.本剤とボセンタン水和物普通錠は生物学的に同等ではなく、本剤はボセンタン水和物普通錠と比較してバイオアベイラビリティが低いため、互換使用を行わないこと(本剤64mgのボセンタン水和物普通錠62.5mgに対するCmax比及びAUC比の平均値はそれぞれ0.82及び0.87)
このせいで既存の普通錠からの切り替えは積極的には行われず、新規患者に対して使用されるものと予想されます。非常に高額な薬ですからね、いきなり変更で不良在庫があああの恐怖。
剤形変更で微妙に用量を変えてくるってのでパキシルCRを思い出しました。
関連記事:パキシルCR錠が発売 押さえるべきポイント
3.割線の有無
トラクリア小児用分散錠の製剤写真。半分はもちろん4分割も可能で、これによって細かく用量調整できます。粉砕前提の既存の普通錠に比べ非常に便利。
ちなみに、トラクリア錠62.5mgは粉砕後6ヶ月は安定(DI調べ)。
気になる薬価は以下の通り。
トラクリア錠62.5mg:4,495円
トラクリア小児用分散錠32mg:4,577円
え、高くない?(・・;
トラクリアの社会的存在意義は大きく、オーファンドラッグとして高薬価が許されてはいますが、錠→分散錠という剤形工夫の値上げとして妥当な額でしょうか?
確かに調剤はラクになりますし、患者は服用が容易になりますし、公費持ちの患者には実質的に負担はないわけですが…うーん。
ソバルディやハーボニーの薬価が話題の中、ちょっと考えてしまいますね。
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