ちょうど棚卸が終わった時期になんですが、タイトルの件について。
多くの大手チェーンでは在庫管理システムが導入されているため、棚卸当日に実地在庫を数え、入力し、大きな差異は修正し、確定して終わりだと思いますが、そうしたシステムが導入されていない中小零細はエクセルに入力していることと思います。
そこで問題になるのが「在庫金額はどうやって計算するのか?」です。
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棚卸という業務は薬局業界ひいては医療業界のみならず、「在庫をもつ」すべての業種で行われていることです。つまりある程度手法は確立されているので、わざわざ独自に編み出す必要はありません。車輪の再発明は最も避けるべき愚のひとつです。
絵画や骨董品など少数の高額商品の棚卸に最適な個別法、期末商品の金額が時価と近くなる先入先出法、多種多様な商品を扱う会社に最適な売価還元法、その他、平均原価法や最終仕入原価法があります。
われわれ薬局業界に向いている棚卸方法はどれでしょう?
はい、売価還元法ですね。
多種多様な商品を扱うし、個別にはさほど高額でもなく、売価は基本一定だからです。
売価還元法では
期末在庫棚卸高(売価) × 原価率 = 期末在庫高
このように期末在庫を計算します。売価は薬価とイコールなので、あと必要な情報は”原価率”ですね。これは卸からの仕入れの”値引率”が該当します。
例えば値引率が10%だとすると、期末在庫棚卸高に0.9をかければ期末在庫高が決まります。通常、取引のある卸同士で叩き合いさせて値引率は同じでしょうし。もし万が一、大きく異る場合は年間仕入額を用いて按分計算して近似としてください。消費税も忘れずに。
さて、売価還元法に比べて個別商品の仕入値を用いて期末在庫高を計算しようとすると大変です。
まず取引のある全卸に単品ごとの仕入値リストを出してもらう必要があります。それをエクセルの表にすべて手作業で打ち込み、さらに卸ごとに違うでしょうから大変です。そもそも普段から先入先出を徹底しているのか?この薬はどっちの卸から入れたやつだっけ?考えただけで吐きそうですね。これを要求されて困っている人の話を聞いて戦慄しましたよ。
前述した通り、これは個別法といい「絵画や骨董品など少数の高額商品の棚卸に最適」な方法です。仮にそこまでやっても売価還元法で算出される期末棚卸高との差異は、経営に大きな影響を与えるほどにはならないはずです。
ならば賢明な経営者としては、最も貴重なリソースである薬剤師の労力を徒に浪費することを避けるべく、売価還元法でいくべきでしょう。
滝澤 ななみ
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経営陣は言わずもがな、基本的な簿記の知識は社会人の必修科目だと思います。
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