ロキソニンなどの一般的な痛み止めでは抑え切れない癌性疼痛に、モルヒネなどの強力な麻薬で抑えるわけです。本来依存性が問題になる麻薬ですが、癌患者のように慢性的に強い痛みがある人の場合は起こりません。
さてこの麻薬、もちろん主に入院患者に使われているのですが、外来患者にも処方されます。これを通常の処方箋とは違い、”麻薬処方箋”と呼び、麻薬施用者の免許番号と患者住所が記載されています。これに基づいて薬局が調剤し、患者に麻薬を譲渡する、という流れです。
面分業、つまり「全国どこの薬局でも薬を受け取れます」とするのは国策であり、それは麻薬も例外ではないのですが、個人的には例外にしています。
理由は以下の通り。
1.防犯の問題
まず問題になるのが防犯でしょう。麻薬を在庫していない薬局なら空き巣にやられても経済的損失のみですが、もし麻薬を持って行かれたらそれだけでは済みません。当然ながら、警察沙汰です。管理に不備があった場合、管理薬剤師が民事上の責任に問われるかもしれません。
2.管理の問題
麻薬はとにかく管理が面倒です。
鍵つきの堅固な金庫にて保存。
入出庫のたびに帳簿への記載、数量の確認。
一度納品したら返品は不可。
しかも高額。
店舗間移動不可。
期限切れなどで廃棄するときは薬務課の立会いが必要。
ちなみに店舗間移動は平成19年9月より可能になっています。
以下参照。
厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部
麻薬小売業者間譲渡許可申請を行う方へ
http://www.nco.go.jp/shinsei3.html
3.インセンティブが弱い
これだけ面倒な麻薬ですが、薬局としてはこれを扱うインセンティブは弱いです。弱いといっても1回の受付で70点ももらえるのですが、面分業という話ですので患者数は少ない設定です。月に二人来るとして140点→1,400円の粗利益。
私が経営者なら割に合わないと判断して手を出しませんし、行政の立場から見てもこれをすべての薬局にやれとはとても言えません。
以上の理由により、多くの薬局では麻薬小売業免許は取得しないのが得策でしょう。なぜなら薬剤師法第21条により「調剤に従事する薬剤師は、調剤の求めがあった場合には正当な理由がなければこれを拒んではならない」からです。
免許を取得していなければ調剤を拒否できますし、取得していれば断る理由は本来ありません。
では逆に、麻薬小売業免許を取得した方がいいのはどんな薬局か?
1.メイン処方元が麻薬処方箋を出してくる
つまり、面分業ではなく点分業の話ですね。もちろん麻薬小売業免許は必須。
2.基準調剤加算2を算定できる
麻薬小売業免許の取得は、基準調剤加算2(30点)の算定条件のひとつです。他の条件を満たしている場合、算定しない手はありません。
3.地域に根ざしたかかりつけ薬局
近隣住民の固定患者で成り立っている面分業薬局、とも言えます。幅広いニーズに対応すべきですし、麻薬も例外ではないでしょう。