プレミネントをはしりとして次々と発売される配合剤。
プレミネントが発売して間もない頃はまだよかったんですが、ARBと利尿薬の配合剤に続いてARBとCaブロッカーの配合剤が、さらに糖尿病薬の配合剤まで次々と発売され、もう何がなんだかわからないような状態に。日本全国の医療関係者を呆れさせています。
MSさんが配合剤新発売のニュースを持ってくるたびに、お互い苦笑い。ほんとうんざりですよね。製薬会社はなぜこんなことをしているんでしょう?
卸や薬局に不良在庫を発生させて短期的に利益をあげている
一言で言ってしまえば儲けるため、しかも不当な方法です。例えば5品目あるうちから2つを選んで配合剤を作る場合、組み合わせ数は
5C2 = 5・4/2・1 = 10 通り
単剤の5品目だけを販売するよりも、さらに10品目の配合剤を追加し、15品目として商品ラインナップを増やした方がいいという考え方です。
少し考えればわかりますが、これによって日本全国の患者さんの服用する薬の総数が増えるわけではないので、実際には日本全国の卸および薬局の在庫として出回ってしまえば、それ以上は伸びません。
つまり、卸や薬局に不良在庫を押し付けて短期的に利益を得る方法と言えます。
「配合剤は薬価が安い」の欺瞞
配合剤を正当化する根拠としてよく聞くものに「それぞれ別々に服用するより薬価が安い」があります。例えば以下の通り。
アジルバ錠20mg:140.6円
アムロジン錠5mg:53.3円
ザクラス配合錠HD:140.6円
「アムロジンがタダでついてくる!」ってやつですね。
じゃあアジルバ錠のみを服用している人に「ご一緒にアムロジンもいかがですか?今なら無料でおつけします!」なんて聞くの?違うよね。
必要なら飲むし、必要ないなら飲まない。そういう調節がしやすいように医療用医薬品は単味を基本としているわけで。あえて配合剤にする理由が「薬価が安いから」はないでしょう。単味剤の薬価を下げれば済む話ですし。
患者の服薬コンプライアンス(アドヒアランス)向上?
あと、「2つ服用するより1つ服用する方が飲み忘れが少ない」もありますね。しかし本当にそうでしょうか?例えば
アジルバ錠20mg 1錠
アムロジン錠5mg 1錠
分1 朝食後 28日分
ザクラス配合錠HD 1錠
分1 朝食後 28日分
これだとほとんど差はないと思うんですが…こういうのって統計データあったりするのかな?朝と夕ならまだ差がありそうだけど、少なくとも配合剤を正当化するに足る理由とは思えません。
製薬会社にとっても経営資源の分散になるのでは?
既存成分とはいえ新規品目ですし、承認申請や市販後調査、ブランディングやプロモーションなど、様々なコストがかかっているのではないでしょうか?そのコストをかけるに足る成果はあげられているんでしょうか?
先月、米P&Gが100あるブランドのうち2〜3割をリストラすると発表して市場から評価されていましたね。こういうのを見ると、品目数を増やすやり方がお世辞にも上手いやり方とは思えないんですが…どうなんでしょう。
一般名処方を原則とし、配合剤を使うかどうかは薬局の判断に
例えば
【般】アムロジピン錠5mg 1錠
【般】アジルサルタン錠20mg 1錠
分1 朝食後 28日分
こういう処方を原則としてほしいですね。調剤する品目は薬局に委ねられ、アムロジン錠とアジルバ錠で調剤しようが、ザクラス錠HDを調剤しようが、後発医薬品の配合剤(未発売)で調剤しようが自由、みたいな。
あるいは配合錠で処方がきても、成分ごとにバラして調剤可能とか。
そういえば、プレミネント配合錠の後発医薬品が少し前に発売されましたね。後発医薬品業界はブランド名を”ロサルヒド”に統一したようです。ロサルタンとヒドロクロロチアジドの頭を取った形ですね。
先発医薬品の商品名、配合されている成分名2つと商品名2つ、さらに後発医薬品の統一ブランド名と…プレミネントに続いて発売された商品のそれぞれで覚える必要があります。まだまだこれからです(ーー;
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