2012年11月にMeijiSeikaファルマより販売開始された、ディアコミットドライシロップ。一般名はスチリペントール。
添付文書の効能効果欄に記載の通り、クロバザム(商品名マイスタン)及びバルプロ酸ナトリウム(商品名デパケン)で十分な効果が認められないDravet症候群患者に用いられます。単剤ではなくクロバザム及びバルプロ酸ナトリウムとの併用。
ちょっと珍しいので備忘録がてら書いておきます。
ディアコミットドライシロップ分包250mg/分包500mg/カプセル250mg 添付文書pdf
1.Doravet症候群?
てんかん症候群の一種で、極めて治療が困難。Drドラベが発見したところからドラベ症候群と呼ばれているようです。メーカーによる公式は以下。
Dravet(ドラベ)症候群について|Meiji Seika ファルマ
経過中の致死率が2割弱とか、精神遅滞で半数以上の患者のIQが50以下とか、多くは突然死とか、私がてんかんに抱いていたイメージより遥かに激烈な疾患でした。
2.薬剤師は袋ごと渡すだけ、調整は保護者が行う
個人的に驚いたのがここ。用法用量チェックなどはもちろん薬剤師がするんですが、あとは分包品を必要数渡すだけ。薬剤の調整は保護者がその都度しなければなりません。
患者用リーフレットの一部です。
我々薬剤師か、ある程度算数に苦手意識がない人なら問題なくこなせるでしょう。しかし、そんな人ばかりではないわけで。
「200mg分2の処方で、1回100mg服用。分包品は1包250mgだから、そのうち100mgほしければ10mLの水で薄めて4mL取ればいいわけだから、1mLのスポイトで4回ね。簡単でしょ?」
これを難なく理解できる母親がはたして何割いるかな…もうちょっと製剤を工夫できなかったんでしょうか?MRに聞いたところ「欧州で販売されている薬がそのまま入ってきているので我々はなんとも…」とのこと。
もちろん開封後および溶解後の安定性の問題があるからこそなんでしょう。母親による調剤過誤で死亡例が挙がらないことを祈ります。
3.体重×20mgから初め漸増
添付文書の用法用量欄記載の通りです。基本的には体重×20mg/日から開始、その後一週ごとに10ずつ増量し、体重×50mg/日まで。分2でも分3でもいいようですが、保護者の負担に配慮して分2が多いかと。
4.副作用発現率9割超え
副作用発現率は全体で91.7%。うち傾眠が79.2%、食欲減退が66.7%、以下略。ただしn=24。
MRによると現在国内での投与例が300件以上集まっているようです。発売から2年以上経過していますし、ぼちぼち更新されるかと。
5.空腹とカフェインを避ける
「食事中もしくは食直後に服用」です。酸に弱く胃酸をモロに食らうと力価が低下するからとのこと。中途半端な時間であれば少しでも何か食べてからの服用を。
また、カフェインと同時に摂取するとカフェインの作用が強くでるので避けるべし。とはいえ小児ですし、コーヒーやチョコやコーラなどは通常摂取しませんね。
こんな感じの専用容器がメーカーから支給されます。なくなったらメーカーに発注を。
中はこうなってます。スポイト、ポリ瓶共にmL目盛つき。
なお、患者数は2〜4万人に1人の希少疾病なので、ディアコミットは希少疾病用医薬品、いわゆるオーファンドラッグです。つまり高薬価。
ディアコミットドライシロップ分包250mg:521.60円/包
ディアコミットドライシロップ分包500mg:1,044.10円/包
ディアコミットカプセル250mg:521.60円/包
同じオーファンドラッグであるところのグリベックやトラクリアに比べると可愛いものですが、やはり高い。しかも一部は使って残りは捨てるわけですから。公的助成により患者負担は軽減されるのが救い。
希少疾病用医薬品では製薬会社はほとんど儲からない、むしろ赤字と聞きます。理由はもちろん患者数が少なすぎるから。それでも販売しているのは製薬会社のCSR(社会的責任)を果たすためです。セコいことばかりしているわけではないんですね、応援しています。
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