そのうちテレビで取り上げられそうな内容なので、あえて先に取り上げてみる。タイトルの通りですが、4月以降薬局でお薬手帳の作成を断ると窓口負担金が安くなります。点数にして7点、金額にして3割負担なら約20円、1割負担なら約10円。
私はお薬手帳推進派でも反対派でもありません。強いて言えば、適切な医療を適切な方法でもって届ける派、です。そのためのツールは時代と共に変遷していくのが当然と言えますので、そういう意味では反対派に近いのかも?
そんな私が、今回の「お薬手帳を断ると窓口負担金が安くなる」件について思うところを少し書いておきます。
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お薬手帳を利用しているかどうかではなく、持参しているかどうか
薬剤服用歴管理指導料は41点。お薬手帳による情報提供を行わなかった場合は34点、つまり7点の減点です。これは、「お薬手帳を利用しているかどうか」ではなく、「お薬手帳を薬局に持参しているかどうか」で算定の可否が決まります。
ゆえに、お薬手帳を利用していない人はもちろん、利用しているけど持参しない人には算定できません。
「安くなるから」と意図的に持参しない患者が増える?
患者がこう考えるのも自然でしょう。シールだけもらうならタダです。
「それだとお薬手帳の意味がない」という薬剤師は多いですが、そうとも限りません。病院に持参して医師に見せることができます。そして薬局では「忘れました」と言う。
結局のところ、お薬手帳を普及させたいの?廃止したいの?
これは国に対してですが、結局のところどっちなんでしょうか?紙ベースお薬手帳普及策の愚で書いた通り、平成24年度の改定ではお薬手帳を実質義務化しましたが、今回の改定では「必ずしも必要としない人もいる」と若干後退させました。
「必ずしも必要としない人」のみ断るというならまだしも、おそらく多くの人が「安くなるなら断ろう」と考えるでしょう。
「上に政策あれば下に対策あり」でしょうが。確かに姑息だし無効な対策だけど、その程度で激昂するくらいならあるべき方向に動くような制度設計しなよ。 / 厚労省 広がる“薄っぺら”お薬手帳、Q&Aで完全否定へ via @risfax http://t.co/kyes8M0Y9W
— 雅 (@miyabi0929) 2014, 3月 23
姑息なことを考える薬局が槍玉に挙げられていますが、そうした行動原理は患者も同じで、本来のお薬手帳の意義を逸脱した使い方が当然予想されます。「人はインセンティブに反応する」は経済の大原則ですよ。
気持ちはわかるけど構成員の意識の高さに依拠するシステム設計がそもそも間違っていると思うよ。作り手のセンスがない。 / 情けない!「お薬手帳を毎回発行して41点を算定」という発想 http://t.co/fW61xYW4rM
— 雅 (@miyabi0929) 2014, 3月 17
私が思うベストな解は、やはりクラウド医療システムを構築し、”お薬手帳”というツールそのものを不要にすること。
次点で、もし”国民皆お薬手帳”にするのであれば、お薬手帳を持参しない人に加算を算定するようにすればいい。なぜならお薬手帳があった方が併用薬などのチェックが容易だし、「安くなるなら」とお薬手帳を持参する人が増えるから。マイバッグ運動みたいな?
「お薬手帳はないけど併用薬はある患者による連想ゲーム」はかなり難易度高いですよ。これはかなり高い点数を算定してもいいのではないでしょうか。
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